出会ったのは終わりへの近道。







世界ってどうでもいいと思ったら本当にどうでもいいものだ。明日が来ようと来ないと構わない、いつ世界が終わっても構わない。そんな気分になると何もかもが楽しいと思えなくなってしまう。誰かが笑ってるだけでいらいらして、何もしていなくても世界なんて下らないと心の中で呟く。もういいのにな、この世がどうなっちゃっても。最後は結局その考えに行き着いて自虐的に笑うんだ。時々、じゃない。しょっちゅうこんな気分になる。

そ ん な わ た し は び ょ う き な ん だ ろ う か 。


「…そんなことないですよ。貴方はいたって普通です」
「ふつ、う?」
「ええ。人間生きているうち誰もが一度は考えますね、そんなこと」

まるで私の心の内を読み取ったかのように語りかけてくるその人は、私の目の前まで来て止まった。す、と顔を上げると目が合う。深く深く深く、全てを吸い込みそうな瞳。私の勘はそこまで当たるほうじゃないけれど、でも、分かった。今、この瞬間。この人に会ったことで私の人生は変わってしまった。それも明が暗になるように、楽が苦になるように、生が死になるように、正反対に。それでも私はこの人と話してみたい、と思った。さっきからずっと目が合ったまま、そらせないでいた。

「そんなの…嘘、だ」
「嘘、とは」
「だって、あの子は苦しみなんて知らずにいっつも明るく生きてる。あの子は思い悩んでるふりばかりで本当は全然思い悩んでいない。こんな、こんな風に真剣に世界が終わることについて考える人なんて、いるわけない」
「それはただ、その人達が愚かなだけでしょう」

当たり前のように紡がれた『愚か』という言葉に僅かに動揺する。…そう、なんだろうか。じゃああの学校が楽しいといつもへらへら笑ってばかりの子も、口を開けば何気なく自分の自慢ばかりの子も、全部全部、愚かな人達なんだろうか。こうやって世界を鬱陶しいと思う私の方が普通だと、そう言うんだろうか。

「じゃあ、貴方は、?」

この人の言っていることの意味が分からなくて、逆にこっちから聞く。自分は、自分はどうなのかと。さっきから散々私の考えを肯定してくれるけど、だったら…この人の考えはどうなんだ。全然裏の読めないその笑顔では、何を企んでいるんだ。いつの間にか心が少しずつ揺れ動いていることに気付く。…心の内が、荒らされている。ゆっくり、ゆっくりと…口を開く。尋ねなければよかった、と思ったのはその台詞を聞いてから。

「僕は、いつでも世界の終わりを望んでいますよ」

今までずっと、私の考えなんて誰にも理解されないと思ってた。だって、話せるはずがない。『今すぐ世界がなくなっちゃえばいいと思ってる』『みんなみんな死んじゃえばいいいのに』なんて、そんな…おかしいこと。でも、おかしくなんてないと彼は言ってくれた。自分も同じだと、そう言ってくれた。心が、ざわめいたんだ。何かを認められたような気がして。…泣きそうなぐらい、嬉しくて。

「名前を教えてください」
「…
「一緒に、世界の終わりを見ませんか?…

断る理由が何処にあるのだろう。ずっとずっと望んでた、世界の終わりへの近道だ。それも一人じゃない、彼と二人で迎えられる。「…よろ、こんで」はにかみながら差し出された手を取る。ぐいっと引っ張られて、


く ち び る が か さ な っ た 。







二人で迎える世界の終焉

(貴方と迎えられるなら、それは最高の終わり方だ)