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あの日君と出逢えたこと。ありがちだと言われても構わない、僕にはそれはどうしたって『運命』としか思えなかった。…だって、そうだろ?正反対の僕達、生きる世界も全く違う僕達が出逢うなんて、それこそ『奇跡』だ。『運命』で『奇跡』。ああ、何て素晴らしい出逢いなんだろう。僕は世界に感謝する。 (彼女と出逢わせてくれて、ありがとう)
「こんな遅い時間に何やってんだあ、嬢ちゃん」 ぴき。頭のどこかでそう聞こえた気がした。声が聞こえる方向へと足を進める。(うざいうざいうざい何でこんなにうざったい奴らばかりなんだ)声の発生源は思ったよりも近くで、すぐ横の路地だった。予想通りというか面白味のない、数人の男が一人の女を壁に寄せて取り囲んでいる姿。手にトンファーを持っていることを確かめ、心の中で呟く。運が悪かったね、今日、僕は物凄く機嫌が悪いんだ。一歩ずつ連中に向かう。 「…ん?何だおまえ」 ワオ、何て怒りやすい連中だ。自分のことは棚に上げて大袈裟に驚く。いきなり殴り掛かってきた…そうだな、男Aとしておこう。男Aの拳をすっと横に避け、トンファーで思いっきり殴る。ガッ。思ったよりも良い音がした。骨が折れているかもしれない。(いい気味だ) 「って、てめえ…!!」 その後は一気に殴り掛かってくる奴らを全員倒すだけ。楽なもんだ。余りにも連中が愚かな所為か、少しずつ高まってくる高揚感。いつの間にか苛々してた気持ちも何処かに行ったみたいだから…そこは感謝しなくちゃね。お詫びに救急車はちゃんと呼んでおいてあげよう。これぐらいの傷ならちゃんと乗せてくれるだろう。
「君も咬み殺されたくなかったら、早く何処かに行くことだ」 持っていたトンファーを収めて、携帯を取り出す。救急車を呼ばないといけない。こいつら全部で何人いたんだ?1、2…ああ、数えるのが面倒だ。多分5台だろう、と予想をつけてかけようとボタンを押す。そこで何もおきなければ電話をして家に帰り、楽しかったとゆっくり寝るだろうに。…後ろから、声が聞こえて。 「っあの、ありがとうございました!」 ぺこっと音がしそうなぐらい深く、彼女は頭を下げる。…お礼を言ったらしい。…僕に?この僕に?意味が分からなくてもう一度彼女の前に立つ。「ねえ君、何やってるの」「助けてもらったから…ありがとうございます」どうやら助けてもらったと勘違いしているらしい。はあ、と大きな溜息をつく。「別に助けたわけじゃないよ。…それよりいつまで頭下げてる気?早く上げたら」「あ、はいっ!」いつまでも感謝されるのも困るので声をかけると、威勢のいい返事が聞こえ…… ゴンッ ! 「…………………」 どうやらさっき頭を下げた時みたいに勢いよく上げたらしい。彼女の頭は僕の顎にクリティカルヒット。じんじんする。「す、すみませんごめんなさい…っ!」焦っていつまでも謝り続ける彼女とは違って僕は冷静だった。…決めた。こいつ、絶対咬み殺す。自分が思ったよりもずっと怒っていることに気付いた。もう一度トンファーを取り出しぐっと握る。その時ふっ、と僕よりも身長の低い彼女に目を向けた。謝るため頭を下げていた彼女もちょうど顔を上げる。
「重いんですね、これ。…それに硬い。持つの大変じゃないですか?」 素っ気なく返事をした僕を機嫌が悪いと思ったんだろうか。(いや、実際さっきまでそうだったんだけど)また謝って僕に差し出してくる。「…ありがとう」ぼそっとお礼の言葉を述べる。…彼女は、笑ってた。 「じゃあ私は帰りますね。本当にありがとうございました」 「…気を付けて、帰りなよ」 去ろうとする彼女に僕が叫んだ言葉。彼女は返事の代わりに、笑った。見ていられなかった。(だって、あまりに綺麗すぎて)僕は暫くその場に突っ立って、魂の抜け殻みたいにそこに存在していた。
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