師匠にはめられた!







「本当ははマフィアの下っ端の方の奴らなんか話にならねーほどつえーんだ。正直な話俺がいままで見てきた弟子の中では一番才能ある奴だと思うぞ。ただアイツはとにかく優しいから、どの敵相手でも手加減しちまう…怪我を負わせる、ってことが出来ないんだ。ほんと、もったいない才能だな」(頼りになるのかよく分からない師匠より)




「…どうしよう」

応接室を出た時には授業はとっくに始まっていて、途中で入るのも微妙だし仕方なく一時限目は無断欠席。落ち着ける場所と考えて始めに出てきた、裏庭の木の下に座る。確かに場所としてはかなり落ち着くけど…なんだろう、心の中は全然落ち着けない。しかもさっきのことを思い出そうとするとどうしてもキスされたとこが甦る。だだだだってキスされたの初めてだったんだから!うわーん私もうお嫁にいけない!(大袈裟です)

「…風紀委員、入らなきゃだめなのかな……」
「そうだぞ」
「!」

独り言のつもりで呟いたのに何故か返事が返って来た。条件反射で立ち上がると周りを見渡す。…誰もいない。と思ったその時寄りかかっていた木の一部がぱかっと穴でもあったかのように空いた。そこにはこっちを見て立っている…

「師匠、驚かさないでください…」
「それはお前の努力次第だ。マフィアたるものいつも周りに気を付けておかないと駄目だからな」
「はーい。精進します」

ああ、良い心がけだ。師匠はそう言いながらさっと目の前に降りてきた。黒いスーツ、おしゃぶり、カメレオン。知らない人が見たら赤ん坊にしか見えない(知ってる人から見ても赤ん坊にしか見えないかも)その人、リボーンがさっきから言っている通り私の師匠の一人だった。見た目は赤ん坊でもその実力はかなりのもので、この人から私が学んだことは多い。今は偉大なボスを教えてくれてる、頼りになる師匠だ。

「それより師匠、こんなところで何やってるんですか?」
「お前に言いたいことがあってきたんだ」
「言いたいこと?」
、お前ちゃんと風紀委員に入れよ」

何で師匠がそのことを知ってるんだろう…。だけど聞いても「見てたからな」とか言われるような気がするし止めておく。…は!もし本当に見てたんだとしたら…わ、私がキス、されたのも、見た…?そ、それはよくなくないよ!ん?よくなくないって良い意味だっけ悪い意味だっけ…ああもう分かんない!と、とにかくそれが本当なら困る…すごく困る。それを師匠がボスに言ってもしもボスが「そうなんだ」って笑顔を返してきたら私悲しくなるもの!そりゃあボスが「俺のにキスだと!?ゆ、許せん!」なんて怒るとは思ってないけど、それでもさらりと流されるのは結構傷付く、し。…師匠が見てなければいい話だけどね!

「心配すんな。別にツナにはヒバリがお前にキスしたなんて言わねーから」
「!や、やっぱり見て…!」
「ああ、見てたぞ」

一刀両断。さっきまで延々と私が悩んでいた元をこうもあっさりとバラすとは。しかもさも『当たり前だろ』とでも言いたげな顔で…。あ、まずい。何か私今初めて師匠に殺意が芽生えた気がする。仕込んであるダーツを猛烈に投げたくなる衝動を抑える。お、落ち着こう。

「えーと…話を戻しますけど、風紀委員に入れっていうのは一体…」
「ヒバリは将来必ず役に立つ男だからな。のこと気に入ったんなら話は早い。今の内にしっかり付き合っとけ」
「っき、気に入ったんですかあれ!」
「気に入らない相手にキスなんかしないだろ」
「………(赤ちゃんにその台詞言われると悲しくなるのは何故?)」

師匠の言葉にがくっと項垂れる。要約すると「ヒバリは役に立つ男だから仲良くなっておけよ」ってことだよね。…利用されてるんじゃないか、私。たとえ師匠の命令だとしてもそれだけは嫌だ。利用されるのは嫌だ!やっぱり断りますと口を開きかけたところで師匠は呟いた。…ほんと、私という人間の使い方をよく分かっていると思う。

「全部ツナの為だぞ。お前が風紀委員となりヒバリと関わることでツナにもプラスになる」

……ボス、の、為。

「まあそれでもお前が嫌だって言うんなら俺は強制はしねーけ…」
「何言ってるんですか!ボスの為ならやります、何でもやってやりますよ!」
「…そうか。そりゃあよかった」

「じゃあ俺は戻るぞ。ちゃんと放課後応接室に行けよ」師匠が去って行って訪れた静けさで少し自分が落ち着くのを感じる。あれ、い、いつの前に拳なんか握ってるんだろう。多分「何でもやります!」のとこだろうけど…ちょっと待ってよ?私今、師匠に風紀委員になるのはボスの為だぞって言われて…思いっきり、賛成した、よね?その前までは断る気でいたのに師匠がボスの為って言った瞬間…。は!も、もしかして私、はめられた!?(そりゃないよ師匠!