最強最悪風紀委員長の強制!







「始めは面白い、と思ったね。何気ない顔して物凄く強いから。ああ、でも最近はかなり馬鹿だと思うようになったな。馬鹿みたいに真っ直ぐなんだよ、彼女は。もっと深いところまで考えないといつか泣きを見るだろうね。その時はまあ…気が向いたら助けてあげてもいいけど」(ツンデレ1匹狼雲雀さんより)




考えが足りない、もっと先のことまで考えて行動しなさいっていうのはたくさんの人に言われるけど、心の底から納得したのは今日が初めてでした。


目覚ましの音ではなく自然と目が覚め、そこで少し違和感を感じる。時計を見て…その違和感の正体を知った。学校開始まであと15分。髪型のセットや朝ご飯を食べる時間など全部合わせておよそ10分。家から学校までもおよそ10分。…つまりは遅刻。「っ…目覚ましのばかー!根性なしー!」一方的に目覚まし時計に怒鳴ると慌てて準備する。ご飯は…この際もういい、適当にお菓子でも持っていこう。起きて家を出るまでにかかった時間が8分。よし…まずまずだ。これは走ったら間に合うかも!学校までの距離を考えてそこまで速すぎず、かと言って遅すぎもないスピードで走る。漸く学校が見えた!と思った瞬間無情にもチャイムは響く。きーんこーんかーんこーん。きーんこーんかーんこーん。優しさの欠片もないメロディーに足を止めた。もう遅刻だし…いいや。歩こう。くそう今までなんとか遅刻したことなかったのにな…。(朝が苦手な私にしては頑張ってた)明日から山本に朝起こしてもらおうか…山本は朝早く起きて野球の練習してるらしいし。下を俯きながら色々なことを考え、校門を通り過ぎ…ようとした。

「…やあ、昨日ぶりだね」

私は下を向いてたから、その声の主が誰なのかはっきりとは分からなかった。ただ、「やあ」という挨拶の声であれ、と思い、「昨日ぶり」という言葉であれれと思い、腕を掴まれ動きを妨げられたことであれれれと思った。仕方なく後ろを振り向いてその声の主を認識した時には「あ」は既に変形して「ぎゃ!」って感じになっていた。

「昨日あんな逃げ方をして次の日遅刻なんて…良い度胸だね」
「あ、あはは…。で、でも昨日も今日も決して故意ではないんです、よ…」
「来て」

そのまま有無を言わさず腕を引っ張られる。逃げようとしたけど…ここだけの話、実は私、かなり力が弱くて。(因みに体力もない。戦うために必要なのは頭脳!)…つまり、逃げれない。校門の所に一緒にいた風紀委員の人達の微妙に同情した表情が泣ける。(ちょ、今から何が起こるって言うの!)向かう先はやっぱり応接室で、その頃には私の頭も冷静だった。…普通に考えてこれから起こるのは昨日の仕返しプラス遅刻者への罰則ってとこか…。昨日の部屋全体にかかった糸を処分するのは大変だっただろうし、風紀委員ってことはやっぱ風紀を守らない人は許さない…よね。もしかしなくても結構まずい状況なんじゃ…。念のため武器の確認はしておく。…うん、大丈夫。いざという時は戦える!

「……………」
「……………(いきなりかかってくるのかなこの沈黙いやだ…!)」
「…座ったら」
「え、あ、は、はいっ!」

色々なパターンを想像していた私も流石に座ってと言われるとは思わなかった。びくっと身体を大きく震わせるとくす、という笑い声が聞こえた。…笑い?あ、あれ。今笑った…?風紀委員の人を見ても既にいつもの顔に戻っている。うーん、本当に笑ったんだろうか。想像出来ないけど…でも、今この部屋にいるの二人だしなあ。

「君…喋り方から態度まで180度昨日と違うね。…別人?」
「あー……えっと、それは…昨日は、ボスの仕返しだったんで」
「ボス?」

やばい、つい口にしてしまった…。言い訳を考えももっともらしいものが思い付かないし…こうなったら!「ボスっていうのはマフィアボンゴレファミリーの10代目のことで、私はそのボンゴレファミリーの部下なんです」取り敢えず正直に言ってみるという博打に出る。まあ博打と言ってもどうせ冗談だと思うだろうからそれはそれで…。

「ふーん」

…反応、なしですか。駄目だ、さっきからこの人の行動や言動が全く読めない。何もかもが常識はずれだ。昨日あれだけのことをしたんだからもう一回再戦かと思えば座ってと言われるし、驚けば笑われるし…。しかもマフィアの話まですんなり受け入れるときた。…こういう人だから一番風紀守ってなさそうなのに風紀委員なんてやってるんだろうか。

「で、何でその『ボス』の仕返しなら別人になるの?」
「性分、みたいなものでしょうか。ボスのこととなるとほんと周りが見えなくて…」

そこまで答える必要があるのか分からないけれど、一応今の私は危険な状況にあるのでここは逆らわずに答えておく。私の言葉に風紀委員さんは何かをじっと考え始めた。思い詰めた表情の彼に私もつい背筋をぴんと正してしまう。

「よく分かったよ。じゃあ今日から君は風紀委員の一員だから。頑張って」
「はい。…………………え!?」
「反応遅いね、君」
「よく言われます…じゃなくて!」

あまりにもあっさり言われるからそのままスルーしてしまうところだった。ていうか何でいきなりそこまで話が飛んでるの!?『よく分かった』って言葉と『今日から君は風紀委員』って言葉は『じゃあ』では結ばれないと思うんですけど!(でもそんなこと口に出せない今の私の立場は虚しい遅刻者…☆)

「文句あるの?」
「文句も何も理由が分かりません!何で私が風紀委員に入らなくちゃいけないんですか!」
「…君は今日遅刻したよね?」
「……は、い」

めいっぱい抗議すると風紀委員さんはいきなり遅刻の話を持ち出してくる。…嫌な予感がしてきた。こういう時の流れっていうのは、大概決まっちゃってるもので…。

「遅刻者には罰則だよ。だから君は風紀委員に入らなくちゃいけない。以上」
「(本当に予想通りだ…!!)」

初めて彼の言動が予想出来たと言えばそうなんだけど…こんなところで当たってほしくなかった。さっきまで仏頂面だったくせにいきなり楽しそうな笑顔になってるしさ…。「僕は雲雀恭弥。君は?」「…です」「そう…ね」 !?いきなり名前呼びされてちょっと(いやかなりかも)驚いた。雲雀、さんは座っていた椅子から腰を上げ私の目の前にまでやってくる。

「まあ君はなかなか面白いから…慈悲をかけてあげよう。入るかどうか、今日一日考えて決めていいよ」
「あ、それなら今日一日考えなくても…」
「因みに。…断ったらどうなるか分かってるよね」

にっこり。笑顔で確認してくる雲雀さん。…慈悲だって言ったくせに…お、脅してるじゃない!「放課後応接室に来て。返事はその時」「え、や、あの…」「来なかったら強制的に風紀委員加入だから」「(なんかもう驚かなくなってきた…)」どっちにしろ拒否権はない、ってことだ。それならもう強制的に入れられる方がマシな気がする。はあ、と溜息をついて「分かりました、放課後もう一度…」と言ったところで私は口を閉ざした。…閉ざされた。

「!!」
「これは昨日の仕返し。…放課後待ってるよ、

暫くぽかんとしていた私も頭が正常に働き出した途端がっと立ち上がった。そのまま応接室を走り出る。き、きききききききキス、を…されてしまった。会ってまだ二日の人に!ボスに手を出した悪い奴に!しかも放課後また此処にこなくちゃいけないんでしょう私。行かなかったらどうせ呼び出しとかされちゃうんでしょう私。先生すらも恐れてるらしいから下手したら先生に入ってくれと頼み込まれちゃうかもしれないんでしょう私。…何てことだ。私はただボスの仕返しがしたかっただけで、寝坊しちゃっただけで、こんな風になるなんて想像もしなかったのに!(助けてボス!