棒倒しで変わる何か!







「A組の総大将の傍にいつもいる奴だろ?変な奴だよなー。全然やる気がなさそうで項垂れてる総大将に『頑張ってください!』なんて笑顔で応援しているし…。B組とC組の連合が相手だっていうのに心配もせずに応援するってことはA具組総大将を信じてるんだろうけど…まったく強そうに見えないんだよなあ」(B組のある男子生徒より)




「ボス、棒倒し頑張ってくださいね!!」
「……う、………うん」

ボスにかけられた濡衣はどうやら晴れなかったようで、それじゃ仕方ないと話し合いの結果A組vsB・C合同チームということになった。本当なら心配する場面でも、私は寧ろ明るい気持ちでいた。なんたってボスだ、どんな困難にも打ち勝てると私は信じている!棒倒しは一番前線で応援しようねと京子と約束してから、まだ棒倒しまで時間があるということで水が飲みたくなった私は校舎へ向かう。道のりの途中で体育祭の中学ランを着ている人を見つけ、すぐに雲雀さんだと分かった。さっきのこともあるし、私は走って雲雀さんの元に行く。

「雲雀さん!」
。…その調子だと、ボスとやらと仲直り出来たんだ?」
「はい!ほんと、雲雀さんのおかげです、ありがとうございます!」

頭を下げる私に雲雀さんは薄く笑い「よかったね」と言ってくれる。私はそんな雲雀さんを見ていてつい頬が緩むのが分かった。そもそもの原因は風紀委員のことだったわけだし、やっぱり雲雀さんにそう言ってもらえるとすごく嬉しい。

「雲雀さんはまた見に来たんですか?はっ、まさかボスの勇姿を見に!?」
「そんなわけないだろう。…棒倒しに参加しようと思ってね」
「あ、なるほど。棒倒しに参加…………棒倒しに、さん、か…?」
「参加というのは仲間に入ることだよ。この場合は競技に加わるということになるのかな」
「そ、それぐらい分かってます!!」

もちろん私が戸惑ったのは参加の意味が分からないからじゃない。そうじゃなくて、雲雀さんが参加すると言ったことにだ。あの!人と群れるのが大嫌いな雲雀さんが。あの!一人孤独でいることが好きな雲雀さんが、皆で一致団結し頑張る棒倒しに参加するなんて…。ひょっとして実は応接室の窓からこっそり体育祭の様子を眺めていて『ああ、僕もあの中に入りたいなあ』なんて思ってしまったんだろうか。それだったら何て感動的なお話なんだろう。素晴らしい!

「ほんとよかったです雲雀さんが皆と力を合わせたいと思うようになるなんて…っ」
「は?、君何言ってるの?」
「え、何って…雲雀さん、皆が群れてるのが羨ましくなって参加するんじゃ…」
「群れる奴らは大嫌いだ」

だ、大がついてしまった!!

「じゃあ何で参加するなんて…」
「A組の総大将が君のボスなんだってね」
「はい」
「A組の総大将っていうのが君がいっつもボスボス叫んで素敵な方だと豪語している人なんだってね」
「はい」
「だからだよ」
「意味が分かりません!」

どういう理屈だそれは。辻褄が合わなさすぎて全く意味が分からない。雲雀さんはこれ以上説明する気もないらしく、「まあ、分からないならそれでいいよ」と話すのを止めてしまった。うーん、分からない。総大将が私のボスってことが、何で雲雀さんが棒倒しに参加する理由になるんだろう。

「今から始まるみたいだし、僕はそのボスとやらと相見えるためB・C合同の方にいってくるよ」
「…え!?もしかして雲雀さん、総大将になるつもりですか!?」
「もちろん」

私が止める暇もなく雲雀さんはすたすたと歩いて行ってしまう。雲雀さんが歩く先は人が自然と避けてくれていて、雲雀さんの後ろを歩けば人混みも怖くないかもしれないなんて勝手なことを考える。…だけど総大将、か。雲雀さん対ボスなんてことになったらすごく白熱した棒倒しになるんだろうなあ。もしかしたら並盛中の歴史上一番熱い棒倒しになるんじゃないだろうか。…た、楽しみ!自分が女子ということが本当に悔やまれる。私もボスの味方として参加したかった。せめてその熱い棒倒しの応援だけでも精一杯頑張ろうと、水を飲んでから席に戻り、皆でボスを応援。繰り広げられる熱い戦いに手を汗握り、危ないところも多々あったけれどもそれらを全て乗り越えボスは見事…のはずが。











「ぼ、ボスっ!!!」

元々合同チームが相手なんだから数は圧倒的に向こうが有利。それにあっちの総大将は雲雀さんだ。下の人達だって雲雀さんが『倒さないでね』と言えばそれイコール『倒したら咬み殺す』ってことになって命懸けで支えるはず。不利な状況の中落ちかけたボスに師匠が撃った死ぬ気弾が命中し地面に足がつかなければいい、ということで山本、獄寺、笹川先輩に乗せてもらってはいいものの、獄寺と笹川先輩を一緒にしたのがまずかった。足が引っかかったとかそういう下らない理由で二人は殴り合ってしまい、当然上にいたボスは落ちる。B・Cの総大将がボスの所為だと思っているB組C組の人達がボスに不満を持たないはずもなく、始まる乱闘。ボスがたくさんの人に狙われている。

「…行かなきゃ!」

ボスが攻撃されていると知ったら話は別。もう棒倒しという競技自体は終わったわけだし女子の私が入ってもいいはず!と決めつけ私は間を縫ってボスに近付こうと前を進む。ボスを守ろうとしている人達の中には獄寺もいてボスの前に立っているけれど、その後ろから別のB組男子が獄寺を殴ろうとしていた。

「っ危ない、獄寺!!!」

よく考えたら今自分達は喧嘩しているんだったとか、あの日以来話したこともないんだったとか思い付くだろうに、それよりも先に身体が動いていた。獄寺へ向けられていた拳を糸で縛り動きを止めると、そのままその人のお腹を蹴る。普通なら殴り合いではまず負けるであろう私も、糸を使って相手の動きを止められれば話は別だ。「…」呆然とこっちを見る獄寺ににこっと笑ってから、また後ろから獄寺を狙おうとしてた人の拳をかするようにダーツを投げる。獄寺がすぐに振り返って殴った。「油断大敵だよ、獄寺」私は声をかける。

「やっぱ駄目だね、私がいないと。ボスのこと、爆弾狂には任せてらんないよ」
「…ぬかせ」

私の言葉に獄寺は口をつり上げ笑い、お互い拳を打ち合ってから背中合わせで敵を倒す。向かってくる人達は全てボスを狙っている人達だ。この人達を倒すことがボスを守ることになる。

何が変わったのか分からない。だけど目の前の世界が不思議と明るくなった気がした。後ろを気にせず戦うということはこんなに自由なことだったんだ。背中から伝わる獄寺の鼓動も激しくて、私と同じように楽しいんだと思うと嬉しくなった。戦うことは好きじゃないのに、これがボスを守ることに繋がってると思うと苦でもなくて、どんどん色んな人を倒してしまう。興奮が止まらない!(どうしよう、ねえ楽しいよ獄寺!