青春を駆け抜ける日の朝!







「俺がのことを知ったのは京子を通してなんだが、先輩に対する態度もきちんと弁えている良い後輩だな。持田先輩!と俺を呼ぶその声はいつも響き、その顔はいつも笑顔に満ちあふれ…。いやもう本当、雲雀がのことを気に入ってるって噂さえなければ今すぐにでも俺のものにするんだけどな…」(ちゃんをこっそり想う持田先輩より)




結局昨日あの後はあまりのショックで仕事が手につかず、雲雀さんにもういいよと言われ家に帰った。



『何でも、体育祭の中で男子が最後に行う棒倒しは相手の総大将を落としたチームが勝ちという変則ルールで、男子の見せ場だとか』



確かにそんなことを言っていたのは私。つまり棒倒しは男子がする競技だと私はちゃんと理解していたはずだ。それをすっかり忘れてしまったのは…やっぱり、ボスに関わることになると私がどれだけ他のことが目に付かなくなるかっていうのの表れなんだろう。にしても…本当にボスを守ることが出来ない、のか…。はあ。大きく溜息をついて、せめて朝一緒に行くぐらいはとボスの家へと向かう。今日は体育祭ということで風紀委員の朝のお勤めもないらしく、久しぶりのボスとの登校だ。ちょうどボスの家の前へ着くと溜息をつきながらボスが歩いているところだった。急いで走り寄って、さっきまでのことは考えず、挨拶をする。

「ボス、おはようございます!」
「おはよう。…あれ、そういえば一緒に行くの久しぶりだね」
「はい!(今日は風紀委員がないので!)」

心の中で付けたしつつ、ボスに返事をする。「今日は総大将頑張ってくださいね、ボス!」拳を握って言ったけれど、ボスはなんだかまだ気乗りしていないようで、「…うん」と重々しく口を開いた。気乗りしてない、とは言ったものの…なんだか、ボスの様子、おかしい?普段より幾分か顔も赤いような…。もしかして、ボス…。

「ボス、ひょっとして風邪ひい「よーツナ。おはよー。お、もいるんだな。珍しい」
「おはよう山本」
「あ、おはよう」

明るい聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると思った通り、山本が笑いながら立っていた。私がいることに驚いているようで、わざとらしく目を丸くしてみせた。「今日は体育祭、頑張ろうね」私の言葉に、想像通りの答え「ああ、もちろん」。本当に山本は体育会系だなあと改めて思う。野球が得意、といっても足も速いし皆を引き寄せる力があるし、チームに1人はいて欲しい人材だ。そんなことを考えながらふ、と山本の後ろに目をやると、誰かがいることが分かった。その誰かが分かった瞬間、私は急に息苦しくなる。

「おはようございます10代目!今日もいい朝ですね………あ」
「…………(…ごく、でら)」

獄寺は私に気付いてなかったようで、ボスに挨拶するために山本の横に並んで声をかけ、目線を少しずらしたばかりにボスの横に居た私の存在に気付いてしまった。あ、と私と目が合った瞬間気まずそうな表情になり、さっと目をそらす。怒っているわけではないみたいだけど、何でここにいるんだ、とは思っているような、そんな顔をしていた。

「よーし、今日は体育祭だし遅れていったらまずいだろ。早く行くか」
「うん、そうだね」

私と獄寺の雰囲気を読み取ってくれたのか、山本が何気なしに大きな声を出す。1人だけ何も気付いてなさそうなボスがそれに頷き、歩き始める。自然と歩く位置はボスと獄寺、私と山本と無難というか、丁度良いものになっていた。さっきのこともお礼を言った方がいいのかなと考えている途中で、山本が尋ねてきた。

「獄寺に聞いた。風紀委員になったんだって?」
「………うん」

獄寺に聞いた、という話を聞いても特に驚きはしなかった。山本には、あんなところを見られたんだ。何の所為であんな風になったのか気にならないわけがないし、獄寺がそれを黙っておかなければならない理由もないんだから。それ以上何も言えなくて黙っていると、私が心配してると思ったのか、山本が気を利かせて先に言ってくる。「俺は、いいと思うぜ。風紀委員になるの」「……うん」山本の思いやりは痛いぐらいに分かるのに、何も言えない。どうしよう。悩んで横にいる山本を見てみたら、こっちを向いて笑っている。苦笑、だろうか。

「ヒバリ、どうだ?」
「うん…優しいよ。すっごく。噂が信じられないぐらい」

前は不良の頂点に君臨するとかいうからどんな恐ろしい人かと思っていたけれど、実際は全然そんなことはない。雲雀さんは優しい。優しくて、すごく、素敵な人だ。山本と同じで、思いやりの心を知っている。元気が無い時は、いつも励ましてもらっている。…こう考えてみると、最近は本当にお世話になりっぱなしだなあ。申し訳ないよりも、有り難い。ちゃんとお礼を言いたいな。雲雀さんに。

「でも、よかった」
「え?」
、楽しそうだから。前は悩んでたみたいだけど、その分じゃ風紀委員、楽しくやれてるみたいだな。よかった」

ぽんぽん、と軽く頭を叩かれる。ちょっと先を歩く山本の背中は雲雀さんと違うけれど大きくて、ああ私はこの人にもお礼を言わなくちゃいけない、と今更ながら思った。山本にも、どれだけお世話になっただろう。いっぱいお世話になって、いっぱい迷惑をかけた。…ねえ山本。風紀委員の仕事を楽しくやれてるの、雲雀さんももちろんだけど、でも、山本のおかげでもあるんだよ。どんな時だって山本が支えてくれるから、私は安心して仕事に熱中出来るんだ。よかったなんて、心配してくれてたから言うんだよね。…ありがとう、山本。今はまだお礼の言葉を口にすることは出来ないけど、いつか、言えたなら。そしてそのお礼を言う時私と山本の傍にいるのは、笑っているボスと獄寺であると、信じたい。元の関係に戻れる日も、きっと近い