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「今日は随分嬉しそうだね、」 ん? 調子に乗って威張ろうとする私の言葉を雲雀さんが強い口調で遮った。そのまま立ち上がってさっき私がまとめた書類を取り出すと、私へ向かって突き出す。「これ」「…これ?」雲雀さんの言う所の意味がよく分からず書類に目を通していたら、先に雲雀さんが説明してくれた。 「それ、印鑑押すところ一番下なんだけど、君明らかに一番上に押してるよね」 ばしっと一喝。そ、そりゃあそうだよなこれは流石に自分でもまずい。…にしても何でこんな馬鹿な失敗してるんだろうか自分。手際良く仕事を進めてたはずなんだけどなあ。と思ったら次から次へ雲雀さんは書類を取り出し、私に差し出してくる。どれもこれもさっき私が目を通し、整理したはずの書類だ。 「これは事務室に持っていかなきゃいけないし、この書類は僕のサインがいる。それから大事な書類のこんなところにシミがついてる…多分お茶だね…あと『風紀委員』って書く所を『風記委員』って書いてるんだけど一体どういうことなの」 何で、ってそれは決まってる。どうしてこんな失敗をするかなんて決まってる。 ボスが総大将ってことが嬉しくて、はしゃいでいるからだ。 さっきからそのことばかり考えて想像して、仕事のスピードは早いといってもそれは本当にスピードだけ、実質は他のことを考えながらやってるんだから成功するはずもない、よね…。だからといってこれは言い訳も何も通用するはずがない。『ボスのことを考えてたら仕事が手につかなくて!』なんて言ったら雲雀さんにまたふざけるなと一喝されてしまいそうだ。…うん、素直に謝ろう。 「…すいません。はしゃぎすぎて仕事のこと考えてませんでした」 正直に今までのいきさつを離しているうちに雲雀さんの顔はどんどん呆れ顔になってきて、私が言い終わると「…なんだそんな下らないことか」と溜息交じりに言われてしまった。「そ、そんなことなんかじゃないです!ボスの活躍が見られるんですよ!?」負けじと言い返したら更に呆れ顔。これは呆れ顔というより、軽蔑してる顔?それだったら心外だ!私にとってボスが総大将ということは、お祝いパーティーをしたいぐらいのめでたいことなのに。 「だって、本当に嬉しかったんですよ。ボスが総大将なんて名誉な職につけて」 雲雀さんに向かって敬礼をして慌てて仕事をやり直す。自分が一度手を付けたはずの書類を見て私は絶句。…これは、さすがにないだろう。『風紀委員』を『風記委員』ならまだしも更に見ていくと『風記季員』とか『風記季買』とか…。最後のに至っては風しか合っていないという凄まじい状況。…うーん、アメージング! 「(うわこれハンコ押す所にシミが…どうしよう…)」 体育祭関連の書類、と言われてまたもやボスのことを思い出しそうになった。…だめだだめだ!ボスのことを考えたらまた仕事が中途半端になってしまう。うんしっかりしっかり!頭をぶんぶんと振って雲雀さんから書類を受け取ったところであれ、と頭の中を疑問がかすめる。…そういえば、雲雀さんは体育祭に参加するんだろうか。体育祭といえば全校生徒が汗水垂らして青春を駆け抜ける熱い有名な伝統行事(…なんか違うかもしんない)だけど…雲雀さんが汗水垂らして、ねえ…。リレーや団体競技に皆の応援の中熱中する雲雀さんを想像しても笑いそうになったけど、その雲雀さんが体操服を着てるのを考えると想像も出来なくてふっ、と吹き出してしまった。不審そうにこっちを見る。 「何笑ってるの」 笑った理由を説明してはいないけれど私の台詞で何となく分かったらしい。普段から不機嫌そうな顔を更に顰めて「いいから仕事やってくれる」と吐き捨てた。はい!返事をして仕事に取りかかる。そりゃあそうだ。雲雀さんがそんな熱い伝統行事に出るはずがなかった。分かっていたはずなのに想像するとやっぱり面白くなってしまう。普通のことをするだけで笑われるなんて…雲雀さんもまたなかなか凄い人なんじゃないだろうか。 「は参加するの」 聞いた話によると棒倒しは総大将を落とした方が勝ちっていうルールらしいし、ボスを落とすなんてそんな危ないことは私が絶対にさせない!ああ体育祭楽しみだなあ…!一人で悦に浸っていて雲雀さんの方にふ、と目を向けると雲雀さんがなんだか考え事をしている。…どうしたんだろうか。そのまま立ち上がって何かの書類を探しているのかぱらぱらと分厚いクリアファイルを捲り、お目当てのものが見つかったとばかりに僅かに表情が和らいだ。それだけならまだしも、何故か雲雀さんはそのページを私へ広げてくる。うん? 「。君は知らないの?棒倒しは男子の団体競技だよ」 …そういえば、そんなことも、聞いた、ような?(気のせいだよ、ね?)
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