総大将おめでとうございます!







か!あいつも沢田に負けず劣らずなかなかの逸材だぞ。あまり戦うことが好きじゃないみたいだが、ボクシングをすればきっとそれも変わると俺は思うのだ。京子の奴にもボクシング部へ入れと言うように頼んでるのだが苦笑するばかりで全然誘う気配がないし…、ボクシング部にこーい!!」(ボクシング部への勧誘を頑張る先輩より)




やっぱり笹川先輩はボスのすごさをちゃんと分かってるなあなんて思ったり。

「"極限必勝!!!"これが明日の体育祭での我々A組のスローガンだ!!勝たなければ意味はない!!」

「…相変わらずですね、笹川先輩」
「………だね」

拳を握り熱弁する笹川先輩を見ながら隣にいるボスに漏らすと、ボスも同じような苦笑気味に呟いた。この前ボスの笑顔に救われた時から、私は今まで通りボスの傍にいる。獄寺とは…まだ、話をすることはないけれど、一緒にいる分には構わないみたい。出来れば獄寺にもちゃんと思っていることが伝わったらと、思ってはいる。




並盛中はといえば、体育祭シーズン。私やボス達はA組なわけだけど、組の代表が京子のお兄ちゃん、笹川先輩ということもあってかなり盛り上がっている。何でも、体育祭の中で男子が最後に行う棒倒しは相手の総大将を落としたチームが勝ちという変則ルールで、男子の見せ場だとか。普通ならば組の代表である笹川先輩が総大将をするのが当たり前、なんだけど。

「だがオレは辞退する!!!」
「え"!!?」

笹川先輩の言葉に一同がざわっと騒ぎ出す。そりゃあそうだ。総大将を辞退し、しかもその理由が「兵士としてたたかいたい」なんて我侭にも程がある。…でも、なあ。何というか、笹川先輩らしい。笹川先輩の痛いくらい真っ直ぐな生き方は、本当に清々しくて、見ていてたまに眩しくなる。近くにいる京子と目を合わす。「妹としては、気が気じゃないね」「うん。…すっごい心配」恥ずかしそうにしている妹に笑みを零した。何であんなに熱い先輩と可愛い京子が兄妹なんだろうか。2人は全然似てない…と、思ったけれど、そうでもない、か。2人ともどうしようもなくお人好しで、真っ直ぐだ。人のために自分が傷付くことなんか厭わない人達。…素敵だなあ。……ボスも、そうだ。自分が傷付こうと、周りの人のことばかり考えてる。私はそういう人に、弱いのかもしれない。

「心配はいらん。オレより総大将にふさわしい男を用意してある」

辞退宣言に続き、代わりまで準備とは…うーん、もしかしなくとも笹川先輩、はじめから棒倒しの総大将にはならないつもりだったのかな。そういえばこの前「体育祭お互い頑張りましょうね」と言った時も「ああ。まあ、俺よりももっと頑張ることになるやつがいるけどな」とよく分からない返事をされたけど、これはそういう意味だったのかと考えると成程、納得出来る。でも笹川先輩より相応しい人、なんて誰のことだろう。考えようとしてもボスの姿しか出て、こない。

「1のA沢田ツナだ!!」
「っボス!?」

さっきの宣言よりもちょうど考えていたボスの名前が出て来たことに驚いて、咳き込む。「おいおい、落ち着けよ」「ううう、うん」笑顔で制する山本に必死に頷く。び、びっくりしたー!まさか本当にボスの名前が出てくるとは思わなかった、ぞ。にしても、やっぱり笹川先輩は分かってるなあ。確かに笹川先輩以外に相応しい人なんて、ボスしかいないわ!賛成の者は手をあげろ、の言葉に「「はいっ!!」誰かとハモッて手を挙げてしまった。ん?声のした方向を見るとこっちを微妙な表情で見ている獄寺。…ああ、そうか。ボスのことに関しては、誰よりもきっと、獄寺が分かってくれるんだ、この気持ち。すぐに目を逸らして何事もなかったかのように手を挙げ続ける。






結局、総大将はボスがするということになった。過半数が挙げたわけじゃないだろうけど、笹川先輩はかなりボスを気に入っているらしく、半ば無理矢理決定してしまった。でも、安心していい。ボスに任せれば、平気だ。

「ほ、ほんとにオレが総大将…?」
「「おめでとうございますボス(10代目)!!」」

A組の集会が終わり、部屋を出たところでボスが呆然としつつも呟く。おめでとうございます、と言ったところでまたもや獄寺と台詞がかぶった。「と獄寺くん、息ぴったりだね」通りがかった京子がそう言って、ボスにも頑張ってねとエールを送り去って行った。…息、ぴったり、だね。ふ、と目をやれば獄寺と目が合うけれど、この前のことを思い出すとすぐに目を逸らしてしまう。…見て、いられない。獄寺の、瞳。

「じゃあボス、私は用事があるのでこのへんで!」
「うん…また、明日ね…」
「明日頑張ろうな、
「うん!それじゃあ」

ボスに挨拶し、山本に手を振ってその場を去る。獄寺は最後まで、そっぽを向いたままだった。胸がちくっとした気もしたけど…大丈夫。今から風紀委員の仕事をしなきゃいけないんだから、余計なことは考えちゃいけない。…だけど、少し、もどかしい。ボスのことも雲雀さんのことも大切に思ってる。そう言えたらいいのに、うまく口には出せないことが。獄寺との隔絶はずっと続いている。こんなに盛り上がった時でも、よそよそしいままで終わってしまった。いつか、分かってもらえるだろうか。難しいかもしれないけど、分かってもらえればいいのに。まだ見ることの出来ない未来を考えていると足が止まってしまいそうだったけど、振り払い、今から会う雲雀さんのことを考えたら、ちょっとだけ、心が軽くなった気がした。気のせいかも、しれないけれど