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その日珍しく10代目を迎えに行かずに直接学校に行ったのは、ただ用事があったから。着いたのは学校が始まる1時間以上も前で、部活をやる連中ぐらいしか来ておらずまだまだ人も少ない。(だからこそ、気付いてしまったんだ)キキーッと大きな音が聞こえて、何気なく目をやれば…バイク。バイクで登校って…それアリか?もしかして頭の狂ったセンコーかと思ってよく見てみれば、どうやら2人乗っている。そして前に乗っているのがヒバリだと気付くのに時間は必要なかった。 「…あいつ、バイクで登校してんのかよ」 やることなすこと、ほんと突拍子もないというか、信じられない。…と、問題はそこじゃなかった。ヒバリが普通じゃないことぐらい分かってたことだ。それよりも…2人、乗り。後ろに乗っている奴はヘルメットをしているから顔は見えないけれど制服から女子だということを知る。…ヒバリの彼女か何かか?ていうかいつまでくっついてんだ後ろの奴。もう学校に着いてるっていうのに…そんなにヒバリが好きなのか。…俺には理解出来ない感性だ。 何でが、ヒバリの、バイクに乗ってるんだ? だってヒバリと一緒に学校/バイクで/ヒバリの彼女か何か/そんなにヒバリが好き/。ああ落ち着け落ち着け俺。ちゃんと、理由があるはずだ。なんたっては、誰もが知る程の10代目馬鹿。ヒバリを好きになるなんて…そんなこと、絶対ありえない、はずだ。ありえちゃ…だめ、だ。ああ何を言ってるんだ俺は。違う、ありえてもいい、いや、駄目だ、さっきから何を言っているんだ、落ち着け、落ち着くんだ。仕方ないじゃないか、だって、嫌なんだから。が、10代目以外の奴に尻尾振ってるとこなんて、見たく、ない。見たく、ないんだ。 ヒバリがバイクから降りて暫くし、もそれに気付いて急いで降りようとする。バイクに慣れていないらしく、跨いでいた片足を戻して、あとはジャンプ…というところで、の動作が止まった。どうやら、ヒバリが何か言ったらしい。がヒバリの方を見て、ヒバリがの方に手を伸ばして。(あ、これは、見ない方が、いい、のに)ヒバリが、を、抱き上げる。本当に一瞬の動作だったけれど、確かにヒバリはを抱き上げ、そして地面に降ろした。戸惑うの頭にぽん、と手を置き一言二言呟くと、1人で歩き出す。後から、も続いた。 …何を、見たんだ?俺は。別にへんな場面を見たわけじゃない。ただがヒバリとバイク2人乗りをしてやってきて、ただヒバリがを抱き上げて、ただヒバリがの頭の上に優しく手をやって、ただ がヒバリについて行っただけだ。…それだけ、なのに。何でか、ものすごく、むしゃくしゃした。そこらへんにあるもん全部、片っ端から殴りたくなった。蹴りたくなった。何だよ、あいつ。10代目にいつも尻尾振ってるくせに、あんな、あんな…ヒバリとも、親しくして。何であんな、大人しく、なるんだよ。いつも俺等の前ではぎゃーぎゃー喚いてる、くせに。
苛つきの原因を、本当は分かっていたんだ。でも知りたくないから、認めたくないから、考えないようにした。考えないようにして、廊下でを待った。応接室前にいた風紀委員に半ば脅しの形で聞くと、やっぱり思った通りで、という1年の女子がこの前から風紀委員に入った、という話だった。だからどうせ応接室だろうと考えて、が出てくるのを待ってたんだ。暫くしては出て来て、俺は後ろから追いかけ、ぐいっと腕を引っ張る。そのまま、壁に押し付けた。 「獄寺。どうしたの、いきなり」 その後俺は、一体、何をして、何を言ったんだろう。覚えてるはずなのに、思い出そうとすればするほどそれを俺の中の何かが拒む。ただ…すごく、酷い言葉を、に投げかけたように思う。酷い言葉をたくさん言って、を傷つけたと思う。いつも騒いでばかりだったが、ヒバリの時とはまた違うけれど、嘘みたいに大人しくなって、泣きそう、だった。俺が、を傷つけたんだ。山本が来て、その時はちっと舌打ちしてしまったけれど…あいつが来なかったら、俺はどうしてたか分からない。もっと酷い言葉を、に浴びせたかもしれない。そう考えると、山本には、感謝しなくちゃいけなかった。だけど、一度去って、でもやっぱりともう一度戻ってみたら…山本が、を抱き締めるような形になっていて。「おまえ、何やってんだよ!」そう叫びたかったのに、口からは何も出てこなかった。…だって、俺には、そんなこと言う資格なんてないんだから。その言葉は、俺が、俺自身に言わなきゃいけない言葉なんだから。をいっぱい傷つけて、を泣かした、そんな俺に、のことを想う資格なんてないんだ。あるわけ…ないんだ。(なあ、そうだろう?)
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