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そんなことを考えながらちょっと停止時間が長すぎることに気付いた。大通りの信号にでも引っかかったんだろうか。さっき言った通り私は目を瞑っているので周りの状況が全く分からない。まあ雲雀さんが何も言わないんなら信号か何かだろう。まさか学校に着いたのに私から降りるのを待ってる、なんてことは、 「ねえ…いつまでくっついておく気?」 雲雀さんの声が耳元で聞こえて、ばっと身体を離す。ヘルメットじゃよく見えないので外して回りを眺めて…絶句。なんてことだろう、既にそこは並盛中だった。…さっきのまさか、は当たってたのか……。…ということはひょっとして雲雀さんからしたら『学校に着いたのにまだくっついたまま』→『そんなに自分とくっついていたいのか』みたいな感じになっちゃうの!?ごご、誤解だそんなの!ボスとならまだしも(…)他の男の人と私がくっついていたい、なんてそんな…! いやでも正直な話、雲雀さんにくっついている状態がすごく落ち着いたのは事実だ。初めはボスの仇だ仇だってそればっかりだったけど、今ではすっかり雲雀さんは優しい人と私の頭の中では位置づけされているし…。…分かん、ないなあ。怖いって恐れられてる人が、こんなにも優しいんだから。皆が、気付いていないだけなのかな?表面の皮があまりにも恐ろしくて、近付こうとさえ思わないんだろうか。…そんなこと、ない、のに。雲雀さんは優しい。すごく、すごく優しいよ。みんな、分かってないだけだよ。 私が一人悶々と考えている最中に雲雀さんはいつの間にやらバイクから降りていたらしい。私も降りなきゃ、と思うんだけども如何せん、私はバイクの乗り降りになれていなくて。取り敢えずまずは跨いでいる片足を戻して、あとはジャンプして降りるだけ、と。 「」 ん?既に降りている雲雀さんが私の名前を呼んだ。降りようとしていた動きが止まる。雲雀さんの方を向いてどうしたんですか、と声をかけようとして…身体が、浮いた。 「!?」 さっきまで目の前にあったはずの雲雀さんの顔が下、に…つまりは、私は雲雀さんに抱き上げられたわけで。驚いたのも束の間、すぐに足が地につく。い、い、今、私、雲雀さんに降ろしてもらったのか?な、何て恐れ多いことを!なんだか足がふらふらしていまいち頭が働かなくて、その場に突っ立ってしまう。ぽん、と優しい音と同時に、雲雀さんの手が私の頭に触れた。 「ほら、早く行くよ。仕事はいっぱいあるんだから」 そう言って一人ですたすたと歩いて行ってしまう雲雀さん。…ずるい、人だ。ほんとに。一人勝手に優しくして、一人勝手に去って行く。そんなの、ずるい、ですよ。普段見ているはずの雲雀さんの後ろ姿も、さっきまでの出来事を思い出させるには充分で。早く行かなきゃと思いながらも、いくら歩いたって雲雀さんとの距離を縮めることは出来なかった。(優しさは、卑怯だ) |