初めてのバイク2人乗り!







「あー、って子でしょ!知ってる知ってる!唯一女子の風紀委員だっけ?色んな噂が飛び交ってるけど私、見ちゃったんだよねー。この前、その子と雲雀さんがバイク2人乗りで一緒に登校してるの。もうあれは絶対カップルだよカップル!あの雲雀さんの表情が和らいで見えたもん!青春だよねー」(並盛中生のある女子生徒より)




「…ほ、ほんとにバイク……」
「嘘だとでも思ってたの?」
「そういうわけじゃないですけど…」

準備を済ませ、家の外に出るとそこにあったのは立派なバイクだった。置いてあったヘルメットを躊躇いもなく取るあたり、本当に雲雀さんのらしい。…まあ、雲雀さんのと雲雀さんが買ったというのは残念ながらイコールで結ばれないけどね。どうか盗難バイクじゃありませんように、と祈っておく。「はい」雲雀さんの声を共にヘルメットがこっちに投げられる「う、わわわ…!」慌てて動いたらなんとかギリギリでキャッチ出来た。ずし、と重み。…結構重いんだなあ、ヘルメットって。勿論乗ったことなんてない私にはバイクは未知の乗り物だ。…バイクの2人乗りって法律で許されてたっけ?

「ほら、乗って。行くよ」
「あ、はい!」

ばっちり乗ってしまっている雲雀さんを見て急いで私も後ろに乗る。は、初体験…!目の前の雲雀さんがヘルメットをしないのを見て首を傾げる。しないのかな…。だけど聞いても「邪魔だから」と言われる気がする。…試しに聞いてみようか。

「雲雀さん、ヘルメットしないんですか?」
「うん、邪魔だからね」
「そ、そうですか…あはは…っ」
「?」

本当に予想通りの答えで笑えた。不審そうに雲雀さんは私を睨む。「あ、き、気にしないでくださいどうぞ!」私が笑ったことにまだ疑問を抱いてるのか少し怪しがって、でもゆっくりと前も向いた。…こうやって、雲雀さんの行動が予測出来るとなんとなく嬉しい気分になる。クイズに当たった、というか…うーん、なんだろう。たまに友達と台詞がかぶったりしたら、「あ、偶然!」なんてなったりするけど、そんな気分。奇跡、とまではいかないけどすごく不思議な気がしてくるから、面白い。それほど雲雀さんの行動が予測出来ないってことだから。

と、色んなことを考えてるうちはよかったんですよ。

雲雀さんがバイクを走らせ出して、それから気付いた。(ああ、自分でも遅いって分かってるから言わないで欲しい!)…この距離は、近すぎる。後ろ、って言っても密着してるわけじゃないんだけど…それにしても、近い。雲雀さんの背中をじっと見てるとほんと大きくて、妙に恥ずかしくなって来た。あ、だめ、なんか、ほんと、緊張する。今更、じゃ、ないか。そんなこと、分かってたくせに。 雲雀さんが、年上だってぐらい。 だけどこうやって後ろから雲雀さんを見ると改めてそれを実感する。頼れる、背中なんだ。雲雀さんの背中。この背中になら全て預けられる…そうさえ思える、背中だった。でも背中についてそこまで考えちゃう自分が嫌になって、首をぶんぶんと大きく振って無理矢理忘れる。「ねえ、」そう言う風に雲雀さんのことをじっくりと考えていたから声をかけられた時にはほんと驚いた。

「はいっ!?」
「いつまで一人で頑張ってるつもりなの」
「へ?」
「ちゃんと僕に掴まってないと、振り落とされるよ」

つ、掴まる!?何に!?あ、雲雀さんにって言ってましたねすいません…って掴まる!?だめだ、頭がクラッシュ状態。ぐるぐるぐるぐると雲雀さんの言葉が回るよ。ちゃんと掴まる。雲雀、さんに。…む、無理無理絶対無理だそんなの!こうやって2人乗りってだけでも緊張するのにそのうえしがみつけだなんて…心臓に対する自殺行為だ。

「早くしなよ」
「あー…あの、えっと、多分、大丈夫、です、よ。ほら、雲雀さんが安全運転さえすれば…」
「でも色んなことが起こるよ、運転してたら」

「ほら」と雲雀さんが言って、前を指差す。雲雀さんの背中で見えないのでちょっと首を横にしたら…壁。キキーッ!とすごい音がバイクからして一気に身体が傾く。「う、わっ!!」いきなりのことに驚いて、とっさに雲雀さんの腰を掴んだ。ああああ危なかった…!ほんとに冗談抜きで振り落とされるとこだった…!

「ほら、ね。こういうことが起きるから、ちゃんと掴まってないと」
「…は!も、もしかして雲雀さん今のワザと…!?」
「…危ないってことを身をもって教えてあげたんだよ。感謝して欲しいぐらいだね」
「!」

雲雀さんが妙に笑いながら言うものだから、一つの結論に辿り着いてしまった。否定も肯定もしない、ってことは…ああ、やっぱりそうなのね。いつまでも掴まなかった私への罰?でも、なんていうか…本当に、身を以て知りました。危ないです、バイク。そもそも雲雀さんと2人乗りってところがおかしいと思います、私。

「もうちょっとで学校だから、少しぐらい我慢してくれる?」

最後にそう言って、雲雀さんはまた運転に集中する。雲雀さんの腰に手をやったままでいると、雲雀さんの身体の温かさとかが伝わってきて、言い表せないような気持ちになった。ひょっとして、雲雀さんは私の安全を考えていてくれたのかもしれない。ヘルメットだって…私にわざわざくれたのは、私のことを考えてだろうし、ずっと雲雀さんに抱きついていなかったのも又然り、だ。さっきからそんなにスピードも速くないし、段差だって…避けて、通ってる。…優しいんだ、雲雀さんは。胸の奥がぐっときて、それを紛らわせるために雲雀さんにぎゅっと抱きついた。恥ずかしいけど、でも今更離すのも微妙で、結局そのまま。だけど見ていられないから、目を瞑った。風を切る音が聞こえ、雲雀さんの温かさも伝わり、なんだか、安心出来た。ねえ、耳元で聞こえた雲雀さんの笑い声は、気のせい、かな。