不良集団なんて怖がられてる風紀委員で唯一女子の私。大変なこともあったりするけど、とにかく今は愛しの彼が頑張ってる姿が見えて幸せの絶頂であります!(えへ)

「…ちょっと、君」
「静かにして下さい雲雀さん!っあー、打った!すごいよジャストヒットですよ見ましたか今の!」
「………見てないよ」
「ちょ、盗塁にまで成功してる…何であんなに完璧なの!笑顔もかっこいい…っ!」
「……………」
「おまっ…何三振してんだばかー!山本君がホームに戻って来れなかったらお前の所為だ!!」
「……………」
「おお、でかいの打った!そして足速いよ山本君…っ!きゃーっ、ホームインした!み、見ましたか雲雀さん!かっこよすぎですよ!爽やか笑顔万歳ですよ!青春スポーツ少年やばいですよ!」
「…咬み殺す」
「え、雲雀さんどうしたんですか。山本君はあんなにも笑っているというのに何を怒ることが?」
「…咬み殺す」

どうやら怒りモードが作動してしまったらしい。私の言葉にも呆れることもつっこむこともなくただ咬み殺すと言い続ける。それなのに私がちっとも怖がってないのは、雲雀さんは私には手をあげないと知っているから。

「そうだ雲雀さん。何で私が1年生にして野球部エースである山本君に恋したか言いましたっけ?」
「………言ってない」
「それは忘れもしない3か月前のことでした!風紀委員の仕事が溜まっていたので放課後頑張って片付けようとした私。疲れてふと窓の外を見て発見してしまったのです!」
「……………」
「明るい笑顔に野球。一瞬で私が恋に落ちたのは説明するまでもないですね!あの時仕事をしていなかったら山本君に恋をすることもなかった…そう思うと風紀委員もなかなかだと思っちゃいます」
「そう。だったら、これ頼むよ」

どさ。窓際によりかかって外を見ている私の目の前に大量の書類が置かれた。ちら、と一番上にあるものに目を通して…風紀委員が片付けるべきものだと分かった。「風紀委員もなかなかなんだってね、それを聞いて安心したよ。僕はまだ他にもすることがあるから」そう言うと雲雀さんは自分の机で別の書類に目を通しはじめる。…もしかして、これ、私がしなきゃだめ?心の中で尋ねる私に雲雀さんの一言(極めつけ)「それ全部終わらせないと今日は帰さないから」。

「そんな!まだ山本君(うちの学校)対山本君以外(他の学校)の戦いは終わってないのに!今からかっこいい山本君のボールを投げる姿が見れるとこで…っ」
「…どれだけ遅くなっても終わるまで帰さないよ」
「っ雲雀さんのおにー!あくまー!」
「…咬み殺されたいの」
「(雲雀さんのおにー!あくまー!)」
「…咬み殺されたいの」

あれ、何で分かったんだろう。口には出してないのに。「君の表情は分かりやすいんだよ。考えてることは全部分かる」ぜ、全部って…どこからどこまで「全部ってことは全部だよ。他に言い様ある?」な、ないですねすみません…。ていうか私って考えてること表に出やすかったんですね。「知らなかったの?」…知りませんよ!

「こうなったら頑張る!山本君だって頑張ってるんだもん、私も頑張る!」
「うん。そうするといいよ」

恋する乙女は無敵なんだ!書類なんかに負けるかー!(うがー!)











「うわー…暗い……そして寒い…」
「手でも繋ぐ?」
「ご、ご遠慮させて頂きます…(何されるか分かんない!)」

仕事が全部済んだ時には辺りはすっかり暗くなっていた。雲雀さんは「僕もやることが終わらなかったんだ」と残っててくれたけど…私を待っててくれたんじゃないかっていうのは、ちょっと自惚れすぎるかな。雲雀さんの提案を首をめいっぱい振って断ったら「そこまで否定されるとむかつくんだけど」と言われてしまった。…そ、そんなこと言われても。

「私手を繋ぐのは流石に恋人同士がいいです…」
「ふーん。…じゃあ君が御執心な彼に手を繋ごうって言われたら?」
「勿論OKですよ!それとこれとは話が別です!」
「…ねえ、ほんと咬み殺していい?」
「ぎゃー!す、すみません…!」

素直に発言しすぎてしまった。わーん、だってあの山本君に笑顔で「…手、繋いでいいか?」なんて言われたら私ほんと胸きゅんで死ねる自信あるもの!(これは妄想の塊で放送しております)今雲雀さんが山本君だったらなんて考えてしまうのが悲しい。そういえばよく考えたら雲雀さんと帰るのって結構久しぶりだなあ。こんな遅い時間に一緒に帰る、となると初めてかもしれない。…ん?

「あれ…雲雀さんて帰る方向こっちでしたっけ?この道を右だったんじゃあ…」
「良く覚えてるね、そうだよ。でも、
こんな遅い時間に一人で帰らせるわけにはいかないからね

…それはつまり、私のためにわざわざ送ってくれるということですか?
心臓の鼓動が速くなったのが分かった。急に頬も熱くなる。ば、馬鹿じゃないの私!これだけでそんなどきどきするなんて…。でででもだって、その台詞はあまりに、  
優しすぎないですか?


誘惑