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自分でもなんて下らない質問をしたのだろうと言いたくなる。しかし私にはこんなことを聞ける人はいないし、聞いたとしても「はぁ?」と一蹴にされて終わりだ。だけど雲雀だったら、雲雀だったらあるいは望む答えを返してくれるかもしれないし……それに、私は雲雀と話がしたい。だからこうやって度々雲雀に会いに来ては、意味のないことを質問する。…前者は言い訳、後者が本音だ。人間なんて結局そんなもの。 応接室のソファーにまるでここが自分の居場所かのように寝転がって、片手で携帯を弄る。メールがきた。開いて差出人を確認すれば、それこそ私が下らない質問をした原因とも言える相手から。メールの着信を見て溜息。メールを読んで溜息。携帯を閉じて溜息。溜息を吐いたら幸せが逃げるという迷信が本当なら、私には今の一瞬だけで3つの幸せが逃げていったことになる。だけどこれが元から幸せなんてやってこない人だったらどうなんだろう。溜息は、いくつ吐いても平気だろうか。いくら吐いても吐かなくても幸せは来ないなら、溜息を吐くことは、それほど腹を立てることではないと思う。しかし雲雀は違ったらしい。私の溜息に苛ついたらしく、「溜息ばっか吐かないでくれない」と言われてしまった。冷たいなあ。口を尖らせて「雲雀ひどい」と言っても雲雀はこっちをちらっとも見ないから、私まで腹が立ってしまいまた携帯を開く。メールの返信をどうしようか迷っていると「で、君は何が欲しいの」雲雀の声が聞こえた。聞いていないフリをして本当はばっちり全部聞いている。こういう雲雀だから、私は何回もここに来ちゃうんだよなあ。抜けきれないのだ、雲雀から。 「えー、いっぱいあるよ。お金でしょ、服でしょ、鞄でしょ、ぬいぐるみでしょ、CDでしょ、本でしょ、漫画でしょ、それからー…」 指を1つ1つ下りながら数えてみると案外欲しいものってあるみたいだった。まだいくつでもありそうだと思い浮かべてそのまま口に出すうちにだんだん間隔が空いてくる。もうこれぐらいかな、と思ったところで「それと、」とあくまでも付け足しに聞こえるように呟いた。 「永遠に変わらない想いかな」 ぽつり。雲雀はさっきから書類を見てばかりで聞いているかも分からなくて(でも多分聞いてる)、だから勿論応接室に響くのは私の声だけということになる。そんな中最後の付け足し…否、一番言いたかったことはよく響いた。言わない方がよかったかな。そう思ってしまうほどに、はっきりと、鮮明に。私は「ねえ雲雀」と声をかけた。「何」素っ気ない返事を返してくる雲雀に戸惑いながらも、続ける。「永遠って、存在するの?」 「君はどう思う」 雲雀の言葉は大体適当で、今の言葉だって適当に私に合わせて言ったんだろうけれど、どうしても私は我慢出来なかった。がばっとソファーから起き上がり書類から目を上げた雲雀と目が合った瞬間に、言葉が出てくる。 「私と雲雀は違うよ」 私が応接室にいつも通り入って来ようとソファーに寝転がろうと充電と言って抱きつこうとあまり反応を見せなかった雲雀が(といっても一番最後のをした時は流石に睨まれたけど)、ここになって動かし続けていた手をようやく止めた。じっと、こっちを見る。雲雀の切れ長の目が私を見つめる。雲雀に見つめられる度に、私の心臓はびくっと震える。ときめきでも恐怖でもない。雲雀を見ているとただ、胸が締め付けられるのだ。そんな時私は考える。自分は雲雀が欲しいのかもしれないと。私は雲雀が欲しくて欲しくてたまらなくて、だけどどうやっても雲雀が手に入らないから苦しいのだと。求不得苦。求める物が得られない苦しみ。それに近い。 「。何考えてる?君はまた、あの男とメールしてるの?」 雲雀が椅子から立ち上がった。私の前までき制服の胸倉を掴み、強く引っ張られたかと思うと強引に唇が重なった。キス、された。私からキスしたらいつも怒ってやり返してくるくせに、自分からする分は雲雀は自由だ。気まぐれ、一匹狼。…だけど、キスは好きな人。 「関係ないけど、腹が立つ」 雲雀の瞳の奥に赤色が見えた気がする。気のせいかもしれないけれど、私にはそう見えた。雲雀は私の制服のリボンをするっとほどく。ボタンを外す。口付ける。私は泣きそうになった。雲雀が嫌でじゃない。雲雀が私の欲しいものを分かってくれないことにだ。 口付けることにも身体を重ねることにも私は愛を感じないよ。そんなものは欲しくない。どうしてそれを分かってくれない?私が欲しいのはもっと簡単な、けれどもっと難しいものなのに。 片目で雲雀が首に咬みつくのを見ながら携帯を開く。さっき来たメールを選択、削除。削除しましたのメッセージを見て、携帯を閉じる。 涙が出そうになった。欲しいものが手に入らないことに。胸がいつまでも苦しいことに。
求 ど も 求
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