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『雲雀。わたしはこの世界がすごく恐いの』
「君がいきなり何でそんなことを考えたか知らないけど…そういうことは理論家にでも聞いてくれないかな」 わたしにとって雲雀は…そういう疑問に答えてくれる人の一人だ。いつも面倒くさいだのなんだの言いつつも、結局は雲雀なりの考えを話してくれる。だから、雲雀はすき。好き嫌いの基準は人によってそれぞれ違うだろうけれど、わたしの基準は"自分という存在を理解してくれるかどうか"だ。雲雀からもらった始めての言葉は、「君、何か文句があるなら誰にでもいいからぶちまけたら?」だった。今考えるとあの時のわたしをよく見抜いていたなあと感動すらしてしまう。そのぶちまける相手はもうすっかり雲雀になってしまっているのも、なかなかに面白い話だ。 「話が長くていくら僕でも始めの方は覚えてないよ」 よく分かったね。雲雀は口端をつり上げて嘲う。まさかわたしが信じるとでも思ったんだろうか。雲雀がわたしと同じく自分のことをどれだけ知っているかどうか、常に調べることは既に分かってる。それに、そう。…こういう話は、雲雀の"大好物"だから。専売特許、でもいうんだろうか。それとも得意分野、かな。とにかくこういう…世界についての話、雲雀は大好きだ。わたしも…だいすきだ。だって、雲雀が好きなものだから。 「結局人間が恐いって、そう言いたいんだろ?」 人間が恐い、か。…確かに、そうなのかもしれない。いくら笑顔だからって、いくら優しくしてくれるからって、心の奥の奥の奥では何を考えてるか分からない。ひょっとしたら「ああ、こんなやつしんじゃえばいいのに」と思っているかもしれないのに…恐怖心を抱かない方が無理という話だ。そんなことを考える自分に気付いて、他の人もそんなことを考えるのかと思うと憂鬱になって、やっぱり人間は恐いと再認識。…そんなロジカル。結局他人の心を全て知ることなんで出来ないんだろう、な。だから、恐い。 「うんそうだね…人間は、恐い。でも、雲雀は恐くないよ」 すぐに発せられたわたしの答えに雲雀は目を一瞬丸くする。…雲雀、わたしには分かるんだよ。他の人間のことなんて全然分からなくても、雲雀だけは違う。今雲雀が何を考えてるか、雲雀が何を求めているのか。全部、全部分かるよ。だから逆に私は世界が恐いんだ。雲雀とは違って、誰も心の内を見せてくれようとはしないから。 「自分でも言うのもなんだけど…僕を理解出来るなら大概の人間は理解出来ると思うよ」 少し遅れていつも通り雲雀は反応する。どことなくその顔が嬉しそうに見えるのは、ただ私の願望なんだろうか。「それなら他の人間も愛したら?」「愛することはとても難しいからだめ」思った通りのことを言えば唇を塞がれた。心地よい感覚に暫く浸る。 「どうせなら僕しか愛したくないって、そう言ってくれる?」 好きだよなんて単純な言葉はいらない。もっと確かな愛が欲しい。
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