「雲雀、雪よ!」
「……そう、だね」

辺り一面真っ白なその光景は決してこの季節には珍しいものではないだろうに、そんなことなど関係ないとばかりに彼女は走り白い絨毯に足跡をつけては喜んでいた。クリスマス。元は祝日でも何でもなかったその日は既に今日では一つの行事となっていて、それが今、この時だった。雪を触りはしゃいでいるを見て思い出す。



「ねえ雲雀、クリスマス当日に雪が降ったら素敵だと思わない?」



昨日、降って欲しいという思いを露にした表情で呟いていた。そんな彼女の願いを叶えてあげたのか、はたまた僕が心の中でこっそり「雪、降らせなかったら咬み殺すからね」と脅していたからか、本当に雪は降った。それもすぐに溶けるような量じゃない。暫くはこの辺りで雪で遊ぶ人達を見られるだろう。僕はただ突っ立っているだけなのに、彼女は一人でも雪で遊びたいらしい。いつまでたっても雪に夢中で僕の元へ戻ってくる気配がない。…さっきまで雪、降ってよかったと思ってたのに、どうやら僕はかなり短気らしい。それとも移り気、って言うべきかな?でもそれは仕方ない。僕はが好きで好きでたまらないし、彼女を喜ばせるためならほんと、どうやって雪を降らせるか真剣に考えてしまうぐらいだ。結局は、僕の脅しが天に届いたみたいで本当によかった。走り回る彼女の足下がちょっとふらふらしていることに気付いて、あ、これはいけないと僕の方から彼女へと足を進める。丁度いいタイミングというか、僕が彼女に触れられる範囲まで来たところでは足を雪にとられたのかぐらっとその小さな身体を傾かせた。それを始めから知っていたように、僕はしっかりと支える。

「あ、ありがと、雲雀」
「あんまり雪に夢中になるなよ。また転ぶよ」
「あはは、怒られちゃった」

結構強く言ったつもりだったのに…何で怒ってるのに楽しそうなの。そんなに雪が降ったことが嬉しい?そんな、怒られたって全然気にならないぐらいに?またちょっと雪に嫉妬しまったかと思えば、彼女の笑顔を見れて雪に感謝…この繰り返し。全く、僕もほんと成長しない。いつか例えば今みたいに短気じゃなく優しく包み込めるような人になれたら、雪に嫉妬なんて下らないこともなくなって、笑顔のを見て僕も嬉しくなる、なんてことがあり得るだろうか。何だか今の僕にとっては、想像も出来ない未来だけど…なれたら、いいなあ。そんな、心の広い人間に。に男が近付いたって「僕の、なんだけど」ってその一言で全部済ませられるような、人に。(今はに近付く男は例外なく咬み殺しているから)

「寒いねえ、手が冷えちゃった」
「…………僕のポケット、あったかいよ」
「ほんと?」

ほんと。そう言いながら僕はの手を握り、自分のポケットに入れた。雪で遊んだ所為ですっかり冷えた彼女の手は、何もしていない僕にとっては丁度良い温度だった。僕が握ると彼女の手は少し、あたたかくなった気がして、別に特別でも何でも無いのに、嬉しくなった。僕という存在が、の存在を変えている。たかが手の温度でそこまで考えちゃう僕はやっぱり馬鹿なんだろうけれど、横のが笑っているのを見たらどうでもよくなってしまう。また、笑顔なんだね、君は。

「ほんと、あったかいね」

ぎゅ、とが僕の手を握り返してきた。うん、あったかいよ。手だけじゃない、心も、身体も、あったかいよ。雪のおかげで溢れてくる君の笑顔だけど、僕は、思うんだ。きっと雪が降らなくたって、君は笑ってくれるだろうって。だって僕、いつも君の笑顔ばっかり見てる気がするんだ。君が怒ることなんてせいぜい、僕が理由も無く喧嘩した時とか、それぐらいで。…ああ、だったらそうか。僕がしっかりしてさえいれば、君はずっと笑っていてくれるのかな。………それなら僕、頑張ろうと思うんだ。生きる意味なんて知らない僕にも、今、生きる意味が出来たよ。君を笑顔でいさせることが、きっと僕の使命だ。


「ん?」
「雪遊び、一緒にやる?」
「っうん!」




神から与えられた使命

(見てろよ神様、 の笑顔は絶対に絶やさないから)(スノースマイル/BUMP)