爆弾好きだの不良だの、周りの連中はそういう目で俺を見る。言ってみればまあ俺は、"怖がられている"んだろう。自分が無愛想で絡みにくい性格だということは自分でも理解しているつもりだ。そんな恐い者知らずな俺だけれど、本当は…ある。否、正確にはいる。恐いもの、とは言わずともそいつにだけは勝てない、適わない。…そんな、奴が。

「なあ、ツナ知らないか?」
「あぁ?お前また10代目に絡もうとしてんのか?」
「違う違う、ツナに用事があるんだよ。で、知ってるか?」

へらへらと笑いながら俺に尋ねて来るこいつは山本といって、身の程もわきまえずに10代目の傍にいる愚か者だ。(大体なんでいつも笑顔なんだよありえねぇだろ!)ちょっと野球が出来るからって皆に好かれる、所謂人気者。くそなんかこういうと俺がこいつを羨んでるみたいじゃねぇか違う、違うんだ!とにかく一生涯こいつとは上手くいかないんじゃないかと俺は思う。俺とは180度違う奴だ。

「俺はまだ来たばかりだから10代目の行動を把握してねぇんだよ!」
「ならいいんだけどな。っておい、何で怒るんだよっ」
「うっせぇおまえどうせ俺のこと今馬鹿だと思っただろうがっ…「あれー、山本?」

苛々しつつ答えても、やっぱりこいつは笑顔で返して来る。…ムカつく。ぷちんと何かが切れて吸ってた煙草を下におとし、そのまま殴り掛かった。そこは一応野球をやってる奴。す、と自然な動作で苦笑を浮かべながら避ける。その余裕さもさらに苛ついてもう一度殴ろうと右拳を振り上げ…そして、そのまま固まる。いや、そんなはずねぇ落ち着いて考えろ。だって、ここでアイツの声が聞こえてくるなんてそんなわけがない。だけどこの声はどうしてもアイツのものとしか思えない。駄目だ、だらだらと冷や汗が流れて来る。今直ぐここを逃げ出したい衝動にまで駆られてしまう。(なあ違うだろ?そんなわけないだろ?)(頼むアイツじゃないと信じてる!)

「おー、。おはよ」
「おはよう山本」

後ろから少しずつ人が近付いてくる気配がする。振り返りたい、けど…振り返りたくない。相反する二つの気持ちがぶつかり合って、結局身体は固まったまま。さっき声を聞いた限りの予想は外れて欲しいと思っていたけれど、山本が呼んだ名前により外れていないと悟る。ていうかほんとに俺声だけで分かっちまったのかよ…へ、変態じゃねーか!いや声なんか人によって全然違うし分かって当たり前、そうそうアイツの声は低いようで高いようで中途半端ななかなか可愛い声…ってだからそれが変態ー!!心の中で一人葛藤を続けていると、あー!と後ろから声が上がった。

「っやっぱ獄寺君だ!どっかで見た後ろ姿だと思ったー。おはよう」
「あ、お、おおおおおおう…っ!」
「?どうしたの拳振り上げちゃって。山本と喧嘩でもしてた?」
「あ、いや…その、これは…っ」

急に走りよって前に現れるもんだからマジで心臓が破裂するかと俺は思った。(真剣に)頭の中でが言った「おはよう」という台詞がエンドレスにリピートされる。ああああ挨拶されたぞ!?挨拶されたぞ俺!?パニックになりすぎてまだ拳を上げていることすら忘れていた。しどろもどろしながらゆっくりと拳を下げる。まさか「こいつがなんかムカつくんで殴りたくなった、」なんてには言えねぇ…!!かといって他に良い言い訳も思い付かねぇ…!!

「そうだ。そういえば、ツナが何処いるか知らねーか?」
「沢田ならさっき学校来る途中で見たけど」
「なーんだ、まだ来てないのか」
「何か用事?」
「あー、ちょっと単語帳ツナに貸しててさ。今日の分まだやってねーから返してもらおうと思って」

ちょうどいいタイミングで山本が に話しかけてくれて本当に助かった。こいつが役に立つ奴だと思ったのは初めてだ…!とりあえず心の中で感謝、ありがとな。山本が事情を話すといきなり は自分の鞄をあさりだす。「はい、私のでいいなら貸すよ」「いいのか?」「うん。私はもうばっちり勉強したから」「うわ、まじサンキューな」仲良さそうに話す二人。胸がずきん、と痛む。…し、仕方ねぇだろこいつらはもともと仲いいんだからよ!そんなの分かりきってたことのくせに…くそ、凄く苦しい。

「んじゃ俺はちょっと勉強するため教室に戻るわ。ありがとな、
「どういたしましてー」

もう一度お礼を言って山本は走り出す。あっという間に姿は見えなくなり、周りにも人はあまりおらず静かな空気が流れる。…って今気付いたけど俺と二人なのか!?気付いたら気付いたで鼓動は急に速くなる。うわあああどうすんだ俺何話せばいいんだ…!どうしても下が向けないのはと目が合った時どうすればいいかが分からないから。でも何も言わないこの空気は色々とまずいだろ…。ど、どうすんだ俺。

「私達も教室いこっか。獄寺君」
「!お、おおおうっ!」

声をかけられただけで身体は震える。姿を目に捉えただけで心臓の鼓動は速くなる。きっと俺はに頼まれたら何も断れないだろう。それこそ「死んでくれる?」と聞かれたって頷くしかないだろう。(勿論はそんなこと言わないけれど)こんな小さくてこんなに可愛いのに最強だなんて…。今こそ惚れた方が負け、ていう言葉を実感する。…そりゃあ、負けだろう。いつも女に囲まれたって「ふん」とか「けっ」で済ませていた俺がここまで変わっちまうんだから。それでもうざったいとか思わないのは…やっぱり、俺が心底に惚れてるから…だろうな。





少年は好きな人に弱いのです

に勝つなんて、それこそ一生ないだろうと確信出来る)