幸せを感じた瞬間。








「…ボス、やっていい?」
「待て。…ここは俺が行く」

す、と前のめりになっていた私の身体を制すとボスは自分の武器を持って敵へと向かって行く。真剣な瞳で自分の部下を庇い敵へと進むその姿は…本当にかっこいいのだけれど、如何せん、うちのボスはどうも最後まで上手く決まらないようで。「いつまでも思う通りになると思うんじゃねーよ」一言相手へ文句を言い、同時に攻撃をしかける。が、「お?」ボスは自分の鞭に引っかかってしまいこける。

「…まただよ………」

このままだとボスが危ないと懐から銃を取り出そうとしたところで止まる。こけた瞬間ボスの鞭がいいようにはたらいたのか、気が付けば全員倒れている敵。…いくら雑魚だとしても、弱すぎないか?あまりの呆気無さにボスがこけたことも忘れ溜息をついた。

「はは、危ないところだったぜ。まあ結果オーライだろ」
「…結果オーライ、ね……」

部下の前でかっこ悪い姿を見せてしまっても、結果オーライと言えるのだろうか。私は少し頭を悩ませる。ボスは少し変わっていて、部下の前では何事も上手くいくとにかくマフィアのボス向きの体質を持っている。ならばさっきのは何だと聞きたいかもしれないけど…正直、こっちが聞きたい。いつもいつも不思議なのだ。ロマーリオなどと一緒にいればそれはもう強いボスの姿が見れるが、私だけだとさっきのように何も出来ないへなちょこボスになってしまう。部下の前では強い、らしいから…ひょっとして自分は部下と認められてないんじゃないかと、最近はそう思うようにもなってたり。

「ああ、そうだったら結構へこむなあ……」
「ん?どうした
「いえ、何でボスの強い姿が私だけの時は見れないんだろうと思って」

素直に思ったままのことを言えば目をぱちくりした後「うーん」と考え出した。別に考えて欲しかったわけでもないんだけど、考え出したとこ邪魔するのも悪いだろう。そのままにしておく。暫くして何か思い付いたのだろうか、「…そうだ、そうだよ!」と一人納得してから口を開く。

「そりゃお前の前じゃ強い姿見せられねーよ」
「?」
「俺はのこと、"部下"じゃなくて"恋人"だと思ってるんだから」

その時の言葉に驚いたわけじゃない。自分達が恋人同士であるのは前からだし、恋人同士である以前に上司部下だとちゃんと理解していたから。…それでも、ボスからその言葉が発せられた時、私はすぐに何も言えなかった。…嬉し、かったから。そりゃあボスのかっこいい姿が見れないのは残念だけど(しかもこの法則だとデートの時絡まれたら私が退治しないといけなくなる)(男女逆転だよ)、でも…それを覆すぐらい嬉しかった。"部下"じゃなくて"恋人"。その言葉には私の希望全てが詰め込まれている気がした。笑われるかもしれないけど、その言葉を聞いた瞬間「あ、私達は大丈夫だな」と、本当にそう思ったんだ。何でも上手くいける気がした。私達を阻むものなど何もない気さえした。一言で言うならそう…幸せ、だった。




反比例の輝き




「普通は恋人の前でこそかっこいい姿見せたいと思うものだけどね」
「見せたいのはやまやまだけどなー…」
「いいよ。…ボスのそういうトコも含めて全部すきだし」
「!」